Entries from 2025-06-01 to 1 month
マキノの栄光と落城・その二 『浪人街』の第一話『美しき獲物』がヒットすると、業界の常道としてただちに続篇が企画された。しかし、第二話『楽屋風呂』はクランク・インの日になっても山上伊太郎が脚本を脱稿できず、撮影現場にはその日までに書き上がった…
マキノの栄光と落城 昭和三(一九二八)年春、社運をかけた大作『忠魂義烈・実録忠臣蔵』のネガフィルムが編集中にその大半を焼失し危機に直面した牧野省三にさらなる追い討ちがかかる。先に独立してマキノを去った阪東妻三郎、市川右太衛門に続いて、片岡千…
八尋不二、寿々喜多呂九平に再会する 京都に舞い戻った八尋不二は、とりあえず仁和寺裏の八十八ヶ所一番札所近くにある鈴木桃作の借家に転がり込んだ。そこにはいつの間にか河合映画を辞めて京都に舞い戻っていた三村伸太郎もいた。 八尋が三村と知り合った…
八尋不二、河合映画に行く 片岡千恵蔵に絶縁状を叩きつけた八尋不二は東上し河合プロダクションに入社する。河合プロは昭和三(一九二八)年二月に設立されたばかりの新しい映画会社で、経営者は土建業者の大親分だった河合徳三郎という人物。河合は大日本國…
八尋不二、マキノを飛び出す 「俺も一丁シナリオとやらを書いてみるか」 撮影所の提灯記事ばかりを書く仕事に飽き飽きした八尋不二は、山上伊太郎に触発されたこともあって、文士を志していた頃にアイデアを書き溜めていたノートをめくり始めた。新作の紹介…
傳次郎はんに負けてたまるかいな 嵐寛寿郎はもともと歌舞伎界出身の役者だけに、その立ち回りは優美で様式的なものだった。それを活動写真向きのスピード感溢れる激しいアクションに改造したのは牧野省三である。嵐は省三を「剣戟の骨法を学んだ恩人」と称え…
鞍馬天狗、参上 ところは北野天満宮の参道脇、牧野省三の邸。マキノ入りを決めた嵐和歌太夫が座に着くなり牧野省三はこう切り出した。 「芝居では給金、月になんぼ貰ろゥてたんや」 嵐は胸を張って答えた。 「百五十円です」 「ほゥか・・・・」と頷いた省三は隣…
林長二郎、顔で斬る 昭和二(一九二七)年の早春、松竹下加茂(京都)撮影所に若き役者が入社した。関西青年歌舞伎出身で初代中村鴈治郎門下の女形林長丸である。 林は入社すると名を長二郎と改め、いきなり『稚児の剣法』(三月十二日封切)で主役デビュー…